身近な人の知られざる顔が、次々と明かされる恐怖

こんにちは。

宇佐美まことさんの小説は初めて読みました。

 

 

公式サイトによる、内容紹介はこちらです。

 

何もかもが似すぎている。世間を騒がす「肌身フェチの殺人」に……。
すべては自らが犯した罪の報いなのか?

上場企業『ザイゼン』の社長財前彰太は、妻の由布子、娘の美華と三人で幸福に暮らしていた。ところが、世間を騒がす女性拉致事件のニュースを見かけ、彰太の心に不安が兆す。その快楽殺人者の手口に覚えがあったのだ。十八年前、反対を押し切って由布子と結婚するため、そして伯父の会社を奪うため、彰太はある“罪?を犯した……。
人間の悪と因果を暴く衝撃のミステリー!

 

内容紹介に「似すぎている」とか「手口に覚えがあった」とか書いてあるのを見て、本書を読む前に次のような妄想をしていました。

 

彰太には付き合っている女性がいたが、その後由布子と知り合ってから、次第に由布子のことが好きになり結婚を考えるようになった。

そこで付き合っていた女性に別れ話を切り出したが承知してもらえず、彼女のことが邪魔になった彰太は、当時世間を震撼させていた事件の犯人「肌身フェチ」に殺されたように見せかけようとして、同じ手口で彼女を殺害した。


過去に罪を犯しておきながら捕まりもせず、のうのうと生きている社長が自責の念に囚われて耐えられなくなる。

あるいは思わぬところに彰太への復讐を企む人間がいて、過去の罪が暴かれて失脚してしまう的な話なのかなと思っていました。

 

けれども読んでみたら彰太が過去に犯した罪は全く違うものでしたし、その後の展開も私のベタな妄想の少なくとも百万倍は面白くて、一気読みしてしまいました。

 

由布子と結婚するため、そして伯父の会社を奪うためとはいえ「そこまでするか?」と思うほど彰太の犯した罪はエグいです。

自分の立場や人の弱みを利用して、よくもまあこんな悪知恵を働かせられたもんだと思いました。

 

そして事件の真相が明らかになるにつれ、彰太を始め妻の由布子や娘の美華が秘密にしていたこと、彰太の腹心の部下や財前家と親しい人達の知られざる顔が、次々と明かされていくのが面白くて目が離せませんでした。

誰が犯人だとか事件の真相そのものよりも、「この人日頃いい顔していて、裏でこんなことを考えてたんだ!」と思うことの連続で、理性によって制御できない悪意の方が怖かったです。

 

またこの物語には、いつも一緒にいて「私はこの人を良く知っている」と思っていたのに、実は何にもわかっていなかったというような怖さがあります。

読後、長年連れ添っている夫の顔を眺めながら、実は私も彼についてまだ知らないことがたくさんあるのかも…と思い、もしそうだとしても知らないままでいたいものだと思ってしまいました。